2012年3月14日水曜日

小学校で図工ーその6(No.150)

小学校での図工ゲスト授業、5日目。
(ぜひ、その1から見てください)

小学3年生76名の「うれしい顔」も
すこしづつ完成に近づいていく。

前の2回、天候が悪くて使えなかった
外デッキでも、今回は制作可能。
のんびり感がイイ感じ。でも、ちょっ
と最後のがんばりを出してみよう、と
アドバイス。あ〜、こうやってズ〜と
描いてたいな〜、の声もあり。確かに
自分もそう思った記憶がある、という
か、今でも思っていたりして(笑)。

楽しむことも大事だけど、「よし出来
た!」の達成感も必要かな、と。

手パレット作戦も登場。図工室がない
環境で、どうやって思い切った塗りが
できるか?と、いつもの机を使わずに
床で画板(ものすごい久しぶりに発掘
)を使った効果が出て来た(かな?)。

で、楽しい試みは伝染する。勢い余っ
ってこんな事に。どんどんやっていた
だきたい。

メガネの中の自分の目を、すごく見つ
めて丁寧に描いている。進行は遅れ気
味になったが、最初の取り組みがここ
にきて生きてきた、と感じる。やっぱ
り子どもの美術は、じっくりと蒸らす
ように、が大事だなぁ。

あともう少し。すごい集中力で描いて
いる。特に図工が大好き(と言ってい
た)な子は、完成させるという意地も
あるよう。この子は、「もっとこんな
授業があるといいな」という感想をく
れた。泣けるな〜。

そして今回も、あっという間に90分。
ありがとう、良い時間だったよ。


実は今回、指導案を作る時に「十分
時間はあるな」と考えていた。なの
で、いろいろと余計な(?)実験的
な試みや導入も織り込んだのだが、
それがやや消化不良になって、完成
が遅くなってしまったように感じた。

ま、仕掛けをしたら、後は素直に、
そしてシンプルに、落ち着いてじっく
り見るのが良いのだろう。そして子ど
もたちからジワっとわき出してきたも
のを、丁寧にすくいあげるのが肝要だ
とも実感した。

と、同時に、指導をまかされると、当
然ながら進行具合が気になるのも事実。
時間に余裕がない先生方が、つい**
式(酒井式とかキミ子方式など)とい
った形式的な方法に頼ってしまうのも
わかる気がした。本にもまとめやすい
から、その手の指導法がたくさん書店
にも並んでいるしね。

ただ、美術は試行錯誤が面白いし、そ
れを試みる意識も大事な要素のひとつ。
たとえ上手くいかなくて、自分で考え
て試していく事が、子どもも、指導す
る側も大切にすることだと思う。

図工や美術教育は、手前の完成を目標
にするのではなく、もっと遠くの先を
見ての取り組みとして考えると、けし
て何とか式の方法にはならないはず。
そしてそれは単純におとな側の安心の
ための方法なんだという事もわかる。

言うは簡単だが、実行するにはガマン
とパワーと工夫と時間が必要。

だからこそ、仕事という形で、ガマン
とパワーと工夫と時間を駆使して作品
そのものに向き合っているプロの美術
家も、何か力になれるとも感じた。

教育現場に、こういった形でチラリと
参加させていただき、とても勉強にな
った自分としての、それが率直な感想
だった。

こんな感じの授業で良ければ、呼ばれ
たら、どこでも行きます!の気持ち。
でもやっぱりヘンテコな工夫を重ねる
と思うので、歓迎はされないのかも。

あ〜、今回は真面目だった。

小学校で図工ーその5(No.149)

小学校での図工ゲスト授業の4日目。

残りの2回は、余計なことをせずに
制作時間をできるだけ確保の作戦。
もう、子どもたちは十分に勢いが
ついているので、どんどん進む。
いつもの黒板落書きも、シンプルに「
励まし・応援」モードに。

もちろん進行には個人差がある。この
あたりから、子どもたちそれぞれを、
出来るだけじっくりゆっくり、声をか
けながら見ていく。こちらがゆったり
構えていくと、不思議と子どもたちも
落ち着いて作品に向かい合っていく。

みんな、本当に楽しそうなイイ笑顔で
描いている。お見せ出来ないのが残念
なくらい。

子どもたちも、こちらも、やっとペー
スが安定してきた。こうやって見てみ
ると、いかに日頃からの取り組みが大
切かがわかるなぁ。ペース取りは、縦
走登山やマラソンなんかにも共通する
ような気がする。

いつもは単発のワークショップが多い
から、どうしても「勝負!」的な勢い
で雰囲気を創っていくことも多い。で
も実はこういった、落ち着いて創作に
向かい合う事が、子どもたちにとって
(もちろんおとなにとっても)大切な
んだな、と実感。

さて、次回は最終回。ちゃんと子ども
たちの中にあるものを引き出すきっか
けくらいはできるかも、と感じつつの
90分間。

まだあと一回、つづく。

小学校で図工ーその4(No.148)

小学校での図工ゲスト授業の3日目。

いつも通り、黒板にタイトルを描いて
導入開始。

今回は、絵の具で描くデモンストレー
ションをやってみた。実はデモするか
どうかを大変迷った末での実行。目の
前で描いてみせる事は、おとなには有
効だけど、子どもに対しては「こんな
風に描きなさい」という押しつけ見本
になりかねない。ただ、中間地点での
刺激と、プロの絵描きとして出来る事
は何か?を考えて行ってみることにし
た。混色を見せながら、様々な塗り方
を試しながらの10分間。絵の具は、赤
・青・黄の三色と白黒。

結果的には、「絵の具で遊ぶ!」とい
う事を強調したので、効果はあったか
な、と思う。見学されていた先生方に
は大変受けたので、参観がある時など
は有効かも。もちろん、目の前の子ど
もの感覚を優先すべきだけど。

さて、後は制作の続き。
ちょっと進みが遅いなぁ、とのこちら
の心配をよそに、楽しそうに福笑い。
もちろんそれで良い。

みんな、悩みながら、楽しみながら、
自分の顔を「作って」いく。これだ
けでも面白い。でも、絵の具で塗っ
て完成してもらわなければ、外部か
らやって来た者の責任?が、と勝手
な思い。

まあ、真剣に楽しんでるから、それで
イイかな(笑)。

このあたりで、最後に予定している
「見せるための工夫」をするのは時間
的にも内容的にも無理だな、とあきら
めつつ、今回もあっという間の90分。

まだまだ、つづく。

小学校で図工ーその3(No.147)

小学校での図工ゲスト授業の2日目。

いつもこんな感じで、始まる前の時間
に黒板や白板にタイトルや内容を描く。

淡々と、目の前で描いていくのがミソ
で、見やすさよりも落書き感を出すよ
うにしている。同時に、興味を持って
話かけてきた人と会話するのも効果が
ある(ように思う。)

始まったら、一応カワウソのヒゲ(笑)
をつけて、導入。学校の中は先生だら
けだから、「カワウソ先生〜」と呼ん
もらうのは差別化できて良かった。親
しみも湧くしね。まあ、あんまりやっ
てるとクドいので、定着した時点でヒ
ゲはとったけど。

まずは、次のステップへ進む準備のた
めに、自作の巨大福笑いで遊ぶ。床に
敷いて、わざとヘンテコに配置しなが
ら顔のバランスへの興味を引き出して
いく。

なぜ、福笑いを面白がることができる
のか?それは、人間の顔は最も興味を
引く部分であり、だからこそちょっと
した配置のズレにも、人は反応してし
まうから。なんて事はもちろん言わな
いで、動かす楽しみ優先。

自分でもやりたくなった時点で、画板
を好きなところに置いて、制作開始!

この時点では、まだ顔のそれぞれを描
いた紙(パーツカード)が完成してい
ない子が多く、基本的には前回の続き
で描いていく。場所自由、だったので
自然と気の合った同士で集まり、楽し
みながら、遊びながら。

でも、行程が段階的になって、盛りだ
くさんになってしまったのは反省。
思ったより進みが遅くなってしまった。

やっぱり、出来るだけシンプルな方が
良いのかな、とも感じつつ、またもや
あっという間の90分。

また、つづく。

小学校で図工ーその2(No.146)

さて、小学校での3年生図工ゲスト授
業の1日目。お題は『うれしい顔って、
どんな顔?』として「バランスを意識
して描く表情のある自画像」を目指し
てみることにした。

ところで、この学校は生徒の姿の公開
が完全NGなので、姿と持ち物は全て
黒塗りね。

まずは導入。コレ、とても大切。なの
で、いつも色々と策を練る。
今回は、前からやりたかったカワウソ
先生を演じてみた。本も出しているし
ね。といっても、顔に黒テープでヒゲ
とハナを張り付けただけなのだが、子
どもたちにはちゃんと受けた。が、見
学に来ていた教頭先生の目は丸くなっ
ていた(と思う)。

これは、スペシャル感(笑)の演出と、
子どもたちとの距離を一気に縮めるた
めの策。それに、今回のテーマである
「顔」を意識させるのにつながってい
く導入の仕掛けでもある。

そして、街で見つけた数々の顔のよう
な物をモニターに映していく。
最近よく使う、iPadをモニターに
ミラーリングさせて手持ちのiPod
で操る方法。すぐセットして使え
るので子どもたちも飽きない。

で、映したのは定番のこんなヤツ。

ちょっと探せば、顔(みたいなの)は
結構見つかる。計25枚ほど次々に見せ
た。で、「なぜ顔に見えるのか」とか、
「なぜそれぞれで性格や気分が違うよ
うに見えるのか」といった事を、子ど
もたちと対話しながら楽しむ。やっぱ
り映像は食いつきがイイ。

などなど、興味を引きながら、創作気
分を高めたところで、いよいよ制作!
それぞれ好きな場所で、自分の目をよ
〜く鏡で見てハガキ大くらいの紙に描
いていく。ここはとにかく「見る」こ
とが大事。ちょっと声をかけるだけで、
自分の目の中の形をどんどん発見して
いくのが、さすが3年生。
さらによ〜く見ながら、眉毛・鼻・口
・耳と、パーツごとに分けて描いてい
くのだった。

と、このあたりで1日目が終了。あっ
と間の90分。

つづく。

2012年3月13日火曜日

小学校で図工ーその1(No.145)

小学校で3年生の図工授業を担当した。

神奈川県の某公立校で5日間、各2時
間(90分)なので計450分!しかも児
童は76人!

お題は、学年の集大成としての自画像
で、図工室なしの条件だった。

いわゆるゲストティーチャーなのだが、
せっかくの機会なので、しっかり指導
案を作って、色々と実験的な試みをさ
せていただいた。


ちょうど直前に、とずけん(東京都図
画工作研究会)の前会長さんと話す機
会があり、「まあ、計画した通りには
いかないですよ。子どもは意外な行動
するしね。そこが面白いんだけど。」
とのアドバイスをいただき、ふむふむ
全くその通り、と納得。

結果、ほんとに勉強になった。という
よりも、子どもたちに教えられた気分。


単発のゲストティーチャーや、大人や
子どもためのワークショップは、プロ
の仕事として結構やってはいるつもり。
だけど、学校の授業として、これだけ
まとめて担当させていただくと、また
違った面白さが生まれてきて有意義な
時間だった。

そして今日、子どもたちからのお礼の
カードがどっさり届いて感激。
もちろん、先生方の配慮もありがたか
ったが、何よりも子どもたちが書いて
くれた「絵を描くのがこんなに楽しい
なんてビックリしました。絵を描くの
が好きになりました。」の言葉が素晴
らしいご褒美なった。


ありがとう、子どもたち。いつもの
76倍疲れたけど、76倍嬉しかったよ。

でも、仕事もしないと貧乏一直線なん
だな〜。だから学校に授業しに行くの
は時々にしよう(苦笑)。


つづく。