小学校での図工ゲスト授業の3日目。
いつも通り、黒板にタイトルを描いて
導入開始。
今回は、絵の具で描くデモンストレー
ションをやってみた。実はデモするか
どうかを大変迷った末での実行。目の
前で描いてみせる事は、おとなには有
効だけど、子どもに対しては「こんな
風に描きなさい」という押しつけ見本
になりかねない。ただ、中間地点での
刺激と、プロの絵描きとして出来る事
は何か?を考えて行ってみることにし
た。混色を見せながら、様々な塗り方
を試しながらの10分間。絵の具は、赤
・青・黄の三色と白黒。
結果的には、「絵の具で遊ぶ!」とい
う事を強調したので、効果はあったか
な、と思う。見学されていた先生方に
は大変受けたので、参観がある時など
は有効かも。もちろん、目の前の子ど
もの感覚を優先すべきだけど。
さて、後は制作の続き。
ちょっと進みが遅いなぁ、とのこちら
の心配をよそに、楽しそうに福笑い。
もちろんそれで良い。
みんな、悩みながら、楽しみながら、
自分の顔を「作って」いく。これだ
けでも面白い。でも、絵の具で塗っ
て完成してもらわなければ、外部か
らやって来た者の責任?が、と勝手
な思い。
まあ、真剣に楽しんでるから、それで
イイかな(笑)。
このあたりで、最後に予定している
「見せるための工夫」をするのは時間
的にも内容的にも無理だな、とあきら
めつつ、今回もあっという間の90分。
まだまだ、つづく。
小学校での図工ゲスト授業の2日目。
いつもこんな感じで、始まる前の時間
に黒板や白板にタイトルや内容を描く。
淡々と、目の前で描いていくのがミソ
で、見やすさよりも落書き感を出すよ
うにしている。同時に、興味を持って
話かけてきた人と会話するのも効果が
ある(ように思う。)
始まったら、一応カワウソのヒゲ(笑)
をつけて、導入。学校の中は先生だら
けだから、「カワウソ先生〜」と呼ん
もらうのは差別化できて良かった。親
しみも湧くしね。まあ、あんまりやっ
てるとクドいので、定着した時点でヒ
ゲはとったけど。
まずは、次のステップへ進む準備のた
めに、自作の巨大福笑いで遊ぶ。床に
敷いて、わざとヘンテコに配置しなが
ら顔のバランスへの興味を引き出して
いく。
なぜ、福笑いを面白がることができる
のか?それは、人間の顔は最も興味を
引く部分であり、だからこそちょっと
した配置のズレにも、人は反応してし
まうから。なんて事はもちろん言わな
いで、動かす楽しみ優先。
自分でもやりたくなった時点で、画板
を好きなところに置いて、制作開始!
この時点では、まだ顔のそれぞれを描
いた紙(パーツカード)が完成してい
ない子が多く、基本的には前回の続き
で描いていく。場所自由、だったので
自然と気の合った同士で集まり、楽し
みながら、遊びながら。
でも、行程が段階的になって、盛りだ
くさんになってしまったのは反省。
思ったより進みが遅くなってしまった。
やっぱり、出来るだけシンプルな方が
良いのかな、とも感じつつ、またもや
あっという間の90分。
また、つづく。
さて、小学校での3年生図工ゲスト授
業の1日目。お題は『うれしい顔って、
どんな顔?』として「バランスを意識
して描く表情のある自画像」を目指し
てみることにした。
ところで、この学校は生徒の姿の公開
が完全NGなので、姿と持ち物は全て
黒塗りね。
まずは導入。コレ、とても大切。なの
で、いつも色々と策を練る。
今回は、前からやりたかったカワウソ
先生を演じてみた。本も出しているし
ね。といっても、顔に黒テープでヒゲ
とハナを張り付けただけなのだが、子
どもたちにはちゃんと受けた。が、見
学に来ていた教頭先生の目は丸くなっ
ていた(と思う)。
これは、スペシャル感(笑)の演出と、
子どもたちとの距離を一気に縮めるた
めの策。それに、今回のテーマである
「顔」を意識させるのにつながってい
く導入の仕掛けでもある。
そして、街で見つけた数々の顔のよう
な物をモニターに映していく。
最近よく使う、iPadをモニターに
ミラーリングさせて手持ちのiPod
で操る方法。すぐセットして使え
るので子どもたちも飽きない。
で、映したのは定番のこんなヤツ。
ちょっと探せば、顔(みたいなの)は
結構見つかる。計25枚ほど次々に見せ
た。で、「なぜ顔に見えるのか」とか、
「なぜそれぞれで性格や気分が違うよ
うに見えるのか」といった事を、子ど
もたちと対話しながら楽しむ。やっぱ
り映像は食いつきがイイ。
などなど、興味を引きながら、創作気
分を高めたところで、いよいよ制作!
それぞれ好きな場所で、自分の目をよ
〜く鏡で見てハガキ大くらいの紙に描
いていく。ここはとにかく「見る」こ
とが大事。ちょっと声をかけるだけで、
自分の目の中の形をどんどん発見して
いくのが、さすが3年生。
さらによ〜く見ながら、眉毛・鼻・口
・耳と、パーツごとに分けて描いてい
くのだった。
と、このあたりで1日目が終了。あっ
と間の90分。
つづく。
小学校で3年生の図工授業を担当した。
神奈川県の某公立校で5日間、各2時
間(90分)なので計450分!しかも児
童は76人!
お題は、学年の集大成としての自画像
で、図工室なしの条件だった。
いわゆるゲストティーチャーなのだが、
せっかくの機会なので、しっかり指導
案を作って、色々と実験的な試みをさ
せていただいた。
ちょうど直前に、とずけん(東京都図
画工作研究会)の前会長さんと話す機
会があり、「まあ、計画した通りには
いかないですよ。子どもは意外な行動
するしね。そこが面白いんだけど。」
とのアドバイスをいただき、ふむふむ
全くその通り、と納得。
結果、ほんとに勉強になった。という
よりも、子どもたちに教えられた気分。
単発のゲストティーチャーや、大人や
子どもためのワークショップは、プロ
の仕事として結構やってはいるつもり。
だけど、学校の授業として、これだけ
まとめて担当させていただくと、また
違った面白さが生まれてきて有意義な
時間だった。
そして今日、子どもたちからのお礼の
カードがどっさり届いて感激。
もちろん、先生方の配慮もありがたか
ったが、何よりも子どもたちが書いて
くれた「絵を描くのがこんなに楽しい
なんてビックリしました。絵を描くの
が好きになりました。」の言葉が素晴
らしいご褒美なった。
ありがとう、子どもたち。いつもの
76倍疲れたけど、76倍嬉しかったよ。
でも、仕事もしないと貧乏一直線なん
だな〜。だから学校に授業しに行くの
は時々にしよう(苦笑)。
つづく。
今期のサマーランド・マップ仕事も
無事終了した。ふ〜っ。
さて、今期はどこが変わったでしょ〜
か?昨年度のマップを、一番最後に
アップしておくので、ものすご〜く暇
な人はどうぞチャレンジを。
東京サマーランド自体も、毎年少しづ
つ改装増築新設削除を繰り返していて、
その複雑怪奇さは一見の価値がある。
それに合わせて、イラストマップも毎
年毎回、あくなき修正を繰り返してい
る。それが出来るのも、最初に作る時
に、伊能忠敬ばりの実地調査を繰り返
した結果。ホントに病気になった位。
イラストマップって、某巨大ネズミの
王国マップを見ても分かるように、単
純に正確であれば良い訳ではなく、強
調すべき所を強めながらも、興味を持
たせ、楽しさを示し、且つ目的地に導
く仕掛けが必要になる。もちろん当然、
絵としての魅力も大切。
この辺りは、絵を描く力と、空間デザ
インを仕事にしていた時の空間把握力
が生きていると思う。図面も読めるし
ね。まったくどんな体験も、無駄には
ならない。
でも、何よりも大切なのは、そこで楽
しむ人の気持ちになって描き、ストー
リーを込めることだと思っている。
プロは絵でお金をいただくので、最初
の段階で完成型が確実に見えていて、
そこに向かって技術を駆使していく。
ただ、作り上げていく段階で、楽しさ
や感情を込めることが出来ないと、仏
作って魂入れず状態になってスカスカ
な作品になる。
技術は、あくまで目的を達成する手段。
大事なのは、目的を見つめて楽しんで、
自分のものにする事。これは、子ども
の絵だろうと、プロの絵だろうと一緒。
そう肝に銘じながら、今年もがんばっ
たのだった。でも、ある程度クールに
ならないと、仕事として成立しないん
だけどね〜。
では、昨年度のマップをどうぞ。え?
同じに見えるって・・・。
神奈川県立近代美術館葉山で開催中の
「ベン・シャーン クロスメディア・
アーティスト」展を観に行った。
ベン・シャーン(Ben Shahn 1898~
1969)は、自分が好きな画家No.1。
しかも、近所の美術館での展示となれ
ば、もう無条件に行かねばならなぬ感
満々。
ベン・シャーンが若い頃に学んだ学校
にも入学したし、開設に協力した美術
教育機関の流れを汲む会社とも契約
した位の、もう盲目のスキスキ具合。
この日は、主任学芸員の方のギャラリ
ートークを楽しみ、充実の展示作品と
向き合った後、帰宅後に日曜美術館で
の特集をテレビ観戦して、ベンシャー
ン神社にお参り(コレは嘘ね)のフル
コースお腹一杯ごちそうさま状態なの
だった。
それにしても、これだけシリアスな
題材を扱いながらも、どこかユーモラ
スで、おしゃれな感じが随所にするの
は何故なんだろうか?
いわゆる社会派的な作品が多いため
か、「世直し画家」?なんて呼ばれて
いたりするのだが、どうも世を正すと
いうより、「わしゃ、絵で淡々と記録
しているだけじゃけんね〜。」的な
クールさが見える。
しかも、恐ろしく芯の強いブレない
意志を伴って。
通常、回顧展で接する画家の作品は、
その作風への葛藤が感じられるのだ
が、この人の作品の場合は、それが
ほとんど感じられない。
その代わり、作家内面の葛藤は、猛烈
に伝わってくる。しかも見た目はユー
モラス。このアンバランスが何とも言
えない魅力なのかもしれないなぁ。
クールなエンジン全開状態、または
激辛あんこ饅頭か?(困)
世の名のある画家の、絵に真摯に向き
合う姿勢にはいつも感心するが、
ベン・シャーンの場合は、もっと向こ
う側の、もっと幅広い何かを見つめて
表現していたような気がする。そん
な、遠くて柔らかくて幅広い視線が、
この画家の魅力に違いない。
と、美術館からの相模湾ビューを眺め
ながら勝手に納得したのだったよ。
それにしても、昨年末のセガンティー
ニ展や今回のベン・シャーン展は、
館内満員。
理由はどうあれ、良い絵に触れようと
する人が多いのは喜ばしい。
どっちも好きな画家という欲目もあ
るが、絵って魂のエネルギーになる、
と思う。
昨年末は、青春小説一気読み(+DVD)をした。
50代オッサンとしての、まっ、心構えとして。
と共に、やっぱり小説の表現には関心があるので。
いずれも、ちょっと前の作品だが、レベルは高く、
同時に多くの共感を得ているものをチョイスした。
自分が体験したジャンルを選んだのも、共感を重視
したため。青春モノって、キュンとするしね。
まず「風が強く吹いている」
箱根駅伝の話なのだが、弱小集団がヤル気を出して
困難に挑戦する、というまさに王道のストーリー。
登場するキャラクター造形が秀逸で飽きさせない。
陸上競技の中でも、駅伝はドラマ性が高く、物語に
なりやすい。そういった点も含めて、登場人物たち
が、キチンと機能しているのには感心した。
やっぱり、良い設定と少々クセのあるキャラクター
を配置すると、物語が勝手に動き出す好例。
次に「一瞬の風になれ」
高校生の陸上競技、特に短距離リレーの感じが堪能
できる。主人公のラフな語りで進むのが、少し甘い
雰囲気で、個人的には好きな文体ではない。にもか
かわらず、3冊一気読みできるのは、やっぱり作者の
力量なのかな。表現方法で印象が大きく変わる好例。
自分自身が、リレー競技でインターハイ地区優勝・
全国大会出場経験があるため、もう完全に共感体験
できたので、あまり冷静に読めなかった(冷静に読
む必要は全然ないけど)。
高校陸上の理想的すぎる生活ストーリー。理想を、
読みやすく親しみのもてる語りで表現するのも悪く
ないな〜。
そして「武士道シックスティーン」と「武士道セブ
ンティーン」
前2作が、女性作家が男子を描いているのと対照的
に、男性作家が女子を描いているのが大きな違い。
文体はこれが一番しっくりくる、単なる好みなんだ
けど、全体構成もシッカリ組み立ててあり隙がない。
剛と柔の使い分けも見事で、メリハリ感が凄い。
まだ、続編の「武士道エイティーン」もあるが、そ
れは文庫になってのお楽しみとしておこう。
やっぱり主人公の個性的な外れ感が鍵だな。魅力的
な人間をしっかり描く、というのが大切なんだな、
としみじみと感じた作品だった。
おまけで「虹の女神」のDVD
大学の映画サークルでの物語。全体に漂う雰囲気が
ほんとに気持ち良いというか懐かしいというか。
もの創りの楽しさや苦労が、学生生活の不安定感と
相まって、何とも言えない日本的箱庭感が漂うのが
いい感じ。海外映画では、ほとんど味わえないドメ
スティックな楽しみと切なさが心にしみる秀作。
好きですコレ。
と、青春モノを一気読みしたおかげで、何だか浄化
された気分になったのだった。
あ〜、若いって、それだけで無条件にイイな。と、
正しいオッサン道を歩めたのだった。